要求吠えは無視をしても治らない?原因と対策を解説!

お悩み解決

吠えは、犬における代表的な問題行動のひとつです。

実際にしつけについての相談件数も、吠えに関連するものが半分程度を占めている印象があります。

吠えは犬・飼い主双方にとって大きなストレスになりやすい問題行動であり、近隣の騒音トラブルにも発展しかねない問題でしょう。

しかし、正しい原因の分析と対策を講じれば改善することは可能です。

この記事では、実際にドッグトレーナーとして犬の問題行動に対応している筆者が、

  • 犬の吠えの原因
  • 吠えの対策
  • よくある間違った対処法

について解説していきます。

今回はいくつかある吠えの中から、「要求吠え」にフォーカスして記事を書きました。

要求吠えは、代わりになる望ましい要求行動を教えていけば改善できます。

  • 愛犬の要求吠えに悩んでいる方
  • 愛犬の吠えている理由がわからない方
  • 自分のしつけ方法に自信がない方

上記に該当する方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

そもそも要求吠えとは?

理事長
理事長

まずは、要求吠えとは何なのかを整理してみよう!

結論からいうと要求吠えとは、

犬に何かしらの欲しいものがあり、それを得るための吠え

のことをいいます。

  • ごはん前
  • 散歩前
  • 飼い主の帰宅時

上記のような状況で起こる吠えが、この要求吠えにあたることが多いでしょう。

上記の例でいうとこれらは、

  • ごはん
  • 散歩へ行くこと
  • 飼い主とのスキンシップ

といった、その犬が欲するものを得るための吠えであるといえます。

しかし、場合によっては似たようなシチュエーションでも「要求吠え」ではなく、「警戒吠え」である可能性があるのです。

要求吠えか?警戒吠えか?

生き物には行動の大原則が存在します。

それはとてもシンプルで、

  • 快を獲得するため
  • 不快を回避・逃避するため

の2つしか存在しません。

どんな行動でもどちらかの原則に沿って生き物は行動をとっているのです。

上記でいうと、要求吠えは「快を獲得するため」の吠えのことをいいます。

一方警戒吠えは「不快を回避・逃避するため」の吠えなのです。

例えば、飼い主の帰宅後に吠える犬がいるとしましょう。

その犬は基本的に家族のことが好きですが、お父さんのことだけは大嫌いです。

お母さんが帰ってきても、娘が帰ってきても、一生懸命大きな声で吠えますが、これはお母さんや娘からのスキンシップを求めている”要求吠え”である可能性が高いでしょう。

一方お父さんが帰宅した時にも同じように大きな声で吠えますが、この場合は大嫌いなお父さんを遠ざけようとする”警戒吠え”である可能性が高いといえます。

つまり、

  • 同じようなシチュエーションでも「吠え」のもつ機能は異なる
  • 機能が異なれば、吠える原因と吠えることで得られるメリットも異なる

原因が異なれば、当然対策も異なったものになります。

愛犬の吠えを改善させるには、まず愛犬の吠えが「要求吠え」なのか「警戒吠え」なのかを見極めることが必要不可欠です。

理事長
理事長

医者も症状の原因を検査してみないと、治療方針が決められないのと一緒だね

シチュエーションだけで、愛犬がなぜ吠えているのかを断定することはできません。

吠えた結果、愛犬はどのようなメリットを享受しているのか。

吠えの”機能”に注目することで、「愛犬の吠えは何を意味するのか」が理解できてくると思います。

愛犬の無駄吠えについて、原因を見分ける方法は別の記事で詳しく解説をしています。

  • 愛犬がなぜ吠えるのか分からない
  • 愛犬の吠えは本当に要求吠え?

というような方は、下記の記事を先にチェックしておくと理解が深まるでしょう。

おおまかに要求吠えについて解説したところで、さらに詳しく要求吠えの原因について見ていきましょう。

要求吠えの原因

要求吠えとは、「犬に何かしらの欲しいものがあり、それを得るための吠え」であるといいました。

言い換えれば、「快を獲得するための吠え」ということです。

愛犬の吠えが本当に要求吠えであるとすれば、何かしら愛犬にとっての快を求めて吠えているはずなのです。

そして、行動にはもうひとつ大切な原則が存在します。

生き物はうまくいく行動しか持続しない

つまり、先ほどの原則と合わせて整理すると

  • 快を獲得するため行動→結果として快を獲得できる
  • 不快を回避・逃避するため行動→結果として不快から逃避できる

上記のどちらかに該当しない行動は、してもあまり意味がないと学習されます。

そのように学習された行動は持続しません。

行動が持続しないということは、問題として表面化しないということです。

要求吠えに悩んでいるということは、

「愛犬は何かしらの快を獲得するために吠えている」のであり、

「結果としてその快を獲得できてしまっている」

ということなのです。

要求吠えの原因を推測するには、

  • 愛犬は吠えることで、”なに”を獲得しようとしているのか
  • 吠えた後、”どのようにして”快を獲得できてしまっているのか

この2点を分析しなければいけません。

参考:具体例ごとの原因

理事長
理事長

とはいっても、抽象的な説明だけじゃイメージしづらいよね。

そんな君たちのために、いくつかよくある具体例をあげてみるよ。

要求対象の”快”と、その快を”どのように”獲得してしまっているかを確認してみてね。

ごはん前の要求吠え

要求対象(快)→ごはん

ごはんの準備を進めている時から吠え始め、吠えている最中にごはんをあげてしまうため、

吠えた結果、ごはんを獲得できたと学習してしまう。

吠えている最中にごはんをあげる

散歩前の要求吠え

要求対象→散歩

散歩の準備を始めると吠え始め、吠えている最中に散歩に出けてしまうため、

吠えた結果、散歩へ連れて行ってもらえたと学習してしまう。

吠えている最中に散歩へ出かける

構ってほしい時の要求吠え

要求対象→飼い主の関心

リビングで飼い主が愛犬を撫でながらテレビを見ている。

撫でるのをやめると吠え始め、再度撫でたり話しかけたりしてしまうため、

吠えた結果、飼い主の注目やスキンシップを獲得できたと学習してしまう。

愛犬の吠えに関心を向ける

犬同士で遊ぶ時の要求吠え

要求対象→他犬の注目や他犬との挨拶

散歩中やドッグランで他犬と遭遇した際に吠え始め、吠えながら他犬に近づいてしまうため、

吠えた結果、他犬が反応してくれた、挨拶させてもらえたと学習してしまう。

吠えている最中に他犬に近づく

上記の具体例を参考に、愛犬の要求吠えの原因を分析してみましょう。

要求対象は物だけではない

要求吠えは無視をすれば治る?

愛犬は”なに”を要求していて、”どのように”うまくいってしまっているか分析することができたでしょうか?

原因を推測できれば、対策はそこまで難しくありません。

現状うまくいってしまっているものを、うまくいかないようにすれば良いのです。

愛犬の求めている”快”を、吠えても獲得できないようにする

飼い主A
飼い主A

とはいってもどうすれば…?

そこで、よくある対処法が「無視をする」というもの。

しかし、結論からいうと、無視をしても要求吠えは改善しません。

改善するどころか、悪化してしまうこともある

無視をすることで悪化する!?

生き物は、過去の成功体験をもとに行動が形成されていきます。

うまくいった行動が学習されて、その行動を繰り返すようになるのです。

しかし、それがひとたびうまくいかなくなると、一時的にその行動を高頻度で繰り返すようになります。

理事長
理事長

「そんなはずはない!今までうまくいっていたんだから!!」

ってな具合にね。

これは、犬だけでなく人間の行動にも当てはまります。

塩こしょうを振った時、中身は入っているのに出てこなかったらどうする?

おそらく、中身を確認して再度何度か振りかけてみますよね?

今まで容器を振れば塩こしょうが出ていたのに、振っても出ないと一時的に容器を何度も振る行動が生まれます。

ライターを使った際、オイルが少なく火がつかなかったらどうする?

おそらく、何度か火をつけようと試みるはずです。

今まではスイッチを押し込めば火がついていたのに、急につかなくなると一時的に何度もスイッチを押してしまいます。

これらは、どちらも今までうまくいっていたはずの行動が急にうまくいかなくなることで発生する現象です。

※この現象を専門用語で”消去バースト”という

覚えなくても全然OK

要求吠えでも同様のことが起こります。

今まで吠えたら何かしらのメリットがあったわけですが、吠えても急に飼い主に無視をされるようになってしまうのです。

そうすると、「そんなはずはない!」と飼い主が何かしらの反応をするまで吠え続けます。

結果、吠えが一時的に悪化するので多くの飼い主はたまらず反応をしてしまうわけです。

そこで反応をしてしまえば、「このくらい吠え続ければ飼い主は反応してくれる!」と飼い主が反応するまで吠え続けることを学習してしまいます。

また、最悪の場合別の行動も学習されることがあるでしょう。

例えばですが、吠えにプラスして

  • 服の裾を齧って引っ張る
  • わざと排泄を失敗する
  • 家具を壊す

などなど。

望んでいる結果が伴うまで、あなたの愛犬は試行錯誤しながらとにかく色々な行動をとることでしょう。

吠え以外の強烈な行動に、飼い主がたまらず反応してしまえば目も当てられません。

次は要求する際、吠えにプラスしてその強烈な行動を同時にとるようになってしまいます。

現実的には、要求吠えを無視するだけで改善するのは難しいでしょう。

要求吠えは無視だけで対策しようとしない

正しい要求吠えの対策

しかし、無視をすることが間違っているわけではありません。

無視をするだけでは、正しい要求行動を教えていないのが問題なのです。

現に、愛犬は要求時に吠えることが正解だと思っています。

それは、今までの飼い主の対応から「要求時には吠えるのが最適だ」と学習しているからです。

犬にだって要求したいときもあるでしょう。

その要求を抑え込むことで飼い主への期待感がなくなり、要求自体しなくなった静かな犬は”お利口な”犬なのでしょうか?

理事長
理事長

そんな支配者と奴隷のような関係は、望ましい関係ではないはずだよ。

つまり大切なのは、望ましい要求行動に少しずつ置き換えていくことです。

望ましくない要求行動を抑えつつ、望ましい要求行動を学習させる

細かく手順を分けて見ていきましょう。

手順1:要求吠えが起こる状況をリストアップ

まずは、要求吠えが起こるシチュエーションをリストアップしていきます。

  1. 箇条書きで良いので、可能な限り愛犬がよく吠える状況をあげてみる
  2. その中から要求吠えだと思われるもの以外を除外する
  3. 除外されずに残った要求吠えリストを、吠えの強度が弱い順に並べ替える

改善するには、意図的に要求吠えの出る環境を設定して練習する必要があります。

まずは愛犬がどのような状況で要求吠えをするのかを、わかりやすく整理しておきましょう。

いきなり吠えの強度が強いシチュエーションで練習しても、なかなかうまくいきません。

吠えの強度が弱い状況から練習をしていくため、分かりやすく並び替えておくことをオススメします。

手順2:望ましい要求行動を教える

ただし、いきなり要求吠えの出る環境で練習を始めるのはNGです。

必ずといって良いほどうまくいかないでしょう。

まずは、事前に望ましい要求行動を教えていきます。

意図的に要求吠えを無視し、少しずつ望ましい要求行動へと置き換えていくのはこの後の手順です。

先に望ましい要求行動を教えておかなければ、”吠える”という行動がうまくいかなかった時の手段として選択肢にも上がってこないでしょう。

そもそも愛犬の行動レパートリーに含まれていない行動は、要求行動として置き換えることができません。

ですので、あらかじめ望ましい要求行動を、ある程度熟練させて愛犬の行動レパートリーに追加してあげる必要があるのです。

理事長
理事長

携帯の待ち受け画面を変えたいのに、そもそも適切なデータがなければ変えることができないよね。

まずは写真を撮るなり、絵を描くなり、ネットからダウンロードするなりしないと!

置き換える要求行動は、飼い主であるあなたが望ましいと思えるものであればなんでもOKです。

例を出すと、

  • オスワリ
  • フセ
  • オテ
  • ベルを鳴らす

などなど。

この中でもおすすめはオスワリです。

それにプラスしてアイコンタクトも同時に教えると、愛犬の要求に気付かないということが減るため、ミスコミュニケーションを最大限防ぐことができるでしょう。

参考程度にそれぞれの教え方を簡単に解説します。

愛犬がオスワリとアイコンタクトをまだ覚えていない場合は参考にしてください。

すでにどちらも覚えている場合でも、教え方が適切でなければ新しい要求行動として置き換えが困難な場合があります。

復習がてら、目を通しておくと良いでしょう。

手順2−1:オスワリの教え方

大好物のおやつを用意します。

小さくちぎれるものがベスト

おやつは1円玉の半分くらいのサイズにちぎって使用します。

  1. おやつを鼻先に持っていき、愛犬の頭上へ動かしながら上を向くよう誘導
  2. おやつに釣られ上を向き、愛犬のお尻が地面についたらおやつをあげる
  3. 何度か繰り返し
  4. 手におやつを持たず、同じ誘導の仕方をして座れるか試す
  5. お尻が地面についた瞬間に「オスワリ」などの合図を出す
  6. 誘導していた手とは逆の手からおやつをあげる
  7. 4〜6を繰り返す

大切なのは、「オスワリ」などの合図で座れるようになることではありません。

おやつを用意しているときに、特に指示がなくても座って待っているという状態が最高です。

指示を忠実に守れる→指示がなければ適切な行動がとれない

指示がなくても場面ごとに考え、自発的に適切な行動がとれる

理事長
理事長

「座ればおやつくれるんでしょっ!」ってとこまで繰り返し練習しよう!

手順2−2:アイコンタクトの教え方

こちらも大好物の小さくちぎれるおやつを用意します。

  1. おやつをたくさん手に持って、愛犬に見えないよう後ろ手に隠す
  2. 愛犬の名前を呼び、直後におやつをあげる
  3. 2をテンポ良く繰り返す
  4. 繰り返す過程で愛犬が集中してきたら、名前だけ呼んでおやつを出さない
  5. 愛犬が自発的に目を合わせてきたらおやつをあげる
  6. 一度目が合ったら、愛犬の集中が切れるまでじっと愛犬を見つめて待つ
  7. 目が合うたびにおやつをあげる
  8. 愛犬の集中が切れたら2からやり直す

この練習も併せて行うことで、目を合わせながらオスワリをすることが増加します。

意思疎通が図りやすくなり、飼い主側も愛犬の要求を認識しやすくなるでしょう。

手順3:望ましくない要求行動には無反応

望ましい要求行動が熟練してきたら、実際に要求吠えが出る状況を意図的に再現してみましょう。

手順1でリストアップした要求吠えの強度が1番弱い状況を再現します。

仮にごはんの準備を始めたら要求吠えが出る場合は、あえてごはんじゃない時間帯に準備をするフリをしてみましょう。

このときトレーニング用のおやつはすぐにあげられるように準備をしておく

いざ、要求吠えが出たら全くの無反応を貫いてください。

無反応は、徹底的に行う必要があります。

  • 声をかける
  • 愛犬に視線を向ける
  • 飼い主から愛犬に触れる

上記のような行為は一切してはいけません。

吠え始めたら、分かりやすく愛犬から体の向きを逸らすのも良いでしょう。

先程説明したように、無視をすれば一時的に要求吠えが悪化することもあります。

それと同時に、なんとしてもうまく事を運びたい愛犬は今までの成功体験を必死に思い起こします。

要求吠えがうまくいかなければ、吠え以外の色々な行動が出現するでしょう。

  • 飛びついてみたり
  • 引っ掻いてみたり
  • 服の裾を引っ張ってみたり…

この時点で手順2がしっかりできていれば、事前に練習した望ましい要求行動が出現するはずです。

手順4:少しずつ要求行動を代替していく

望ましくない要求吠えを無視して、事前に練習した望ましい要求行動が出現したら大チャンスです!

その瞬間に準備していたおやつを使って、目一杯褒めてあげましょう。

吠えが出たら徹底的に無反応

望ましい要求行動が出たら、すかさずおやつを使って褒めまくる

擬似的に再現した環境で吠えが出ることなく、望ましい要求行動が出るようになってきたら普段の生活でも同様の対応をしていきます。

仮にごはん前の要求吠えであれば、

吠えが出たらごはんを与えず無反応

望ましい要求行動が出たらごはんを与える

ここまで来れば、わざわざおやつを使わなくても愛犬の要求している快が報酬として働き、勝手に良い学習が進み続けることになります。

今後の生活で吠えているときに要求対象を与えるようなことをしなければ、激しい要求吠えが再発することはないでしょう。

このトレーニングは、必ず要求吠えの強度が弱い状況から順に練習してください。

1番強度の弱い状況で吠えが出ず、望ましい要求行動へと置き換わってきたら次のレベルのシチュエーションでトレーニングを開始します。

最初のうちは、状況が変われば吠えが再出現する可能性が高いでしょう。

しかし、色々な状況でトレーニングを重ねていくにつれて望ましい要求行動の学習がどんどんと進みます。

そうなれば、新たな要求行動は愛犬の要求手段として確立していくことになります。

ゆくゆくは練習していない状況でも吠えが出現せず、望ましい要求行動を選択するようになっていくでしょう。

理事長
理事長

愛犬は飼い主に要求が伝わる

飼い主は要求のたびに吠えられることがなくなる

ご近所さんも静かに快適に過ごせる

これぞまさに、”三方よし”だね!

まとめ:望ましい要求行動を教えてあげよう!

犬は、人間のように言語を話しません。

その代わりとして、”ボディランゲージ”といわれる身振り手振りのような非言語で自分の意思を表現します。

一方、人間は言語がメインのコミュニケーションツールである生き物です。

そのため、犬のボディランゲージにはなかなか気付いてあげられないことが多いでしょう。

その結果、犬のフラストレーションはどんどんと溜まっていきます。

そうして、人間に1番気付かれやすい”吠える”というコミュニケーション手段をある種必然的に学習してしまうのでしょう。

犬も生き物であるがゆえに、その要求を抑え込むことは不可能です。

要求吠えのよくある対策である、”無視をするだけ”はまさに要求自体を抑え込んでしまう方法であるといえます。

要求を抑えるのではなく、正しい要求方法を教えてあげなければいけません。

人と犬という他種が共存していくには、横着をせずコミュニケーションの工夫が必要なのです。

そうして犬の声を汲み取ることができれば、あなたと愛犬の絆はさらに深まることでしょう。

学ぶことがそのための第一歩です。

愛犬にとって頼れる飼い主を目指しましょう。

楽しい愛犬ライフを!

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